Denali(6,194 m)vol. 3

山行6日目。

MCでは毎日更新される天気予報を確認できるので、朝一でレンジャーテントへ。

前々日の予報よりも高気圧に覆われる日が2日程延びていて、

この先3日間は引き続き好転が期待できそう。

それならばと早速テントを撤収して、C4(ハイキャンプ、HC)に上がる準備をする。

HCは標高5,300 mにあるため担ぎ上げる荷物は最小限にとどめたい。

よって、アタックに必要ない装備や下山用の食料と燃料、ソリはMCにデポすることに。

デポのこと「キャッシュ」と呼ぶが、その方法もきちんと決められている。

NPS&Pレンジャーとのミーティングの際、数枚のキャッシュ許可証が交付される。

この許可証には隊名および隊長の氏名、入山期間や利用するエアタクシー会社名が記載されており、

キャッシュ放棄による山の汚染の抑止となっているようだ。

またキャッシュに食料や燃料が含まれている場合は野生動物に発見されない為に2 m以上の深さに埋めること、

埋蔵地点には数本のフラグを立てて許可証を貼付けることなどの規定もある。

デナリ国立公園の自然と野生動物を保護する姿勢の強さがよくわかるシステムだ。

 

準備が整ったら、いざ再びのヘッドウォールへ

出発が9時を過ぎてしまったこともあって、後ろからは続々とクライマー達が続いてくる。

ヘッドウォールの斜面は8時半頃から日が当たり始めるのだが、

出発が遅かったせいで まともに直射日光を浴びることに…

気温は低いのだが、直射日光の急坂は体にこたえる

4,900 mの稜線に着いた頃にはヘトヘトで軽い頭痛も…

昨日の高度順化の時とは明らかにパフォーマンスが違う。

 

重い体には辛い5,000 m超えの稜線歩きの16リッジ区間。

HCへと続く稜線には大小16個ものピークがあって、直線距離は大したことないのだけれども なかなか骨が折れる。

コンティニアスビレイが必要な登山隊は、ピケット(スノーバー)にカラビナをクリップしながらの登攀となるので通過にそれなりの時間がかかる。

後ろ振返ると、やはり渋滞気味。

ソロの利点である身軽さとスピードはこういうときに生きる。

HCに到着すると早速テントを張ったのだがこれもまた一苦労!

これまでのキャンプと違って地面が雪ではなくカチカチの氷で、ジュラルミンのシャベルでは歯が立たない!

結局、四隅はピッケルとアイススクリューで固定し、フライの裾は雪壁の一部を砕いて作った氷をのせて固定した。

この氷の固さと積雪の少なさを見ても、HCが低温で風の強い厳しいキャンプであることが容易に想像できた。

HCからの眺め。

経験したこと無い標高の眺望に感激なのだが、デナリの頂上はさらに900 mほど上にある。

山頂からは一体どんなすばらしい景色が見られるのだろうかと期待して就寝。

 

翌日、朝起きてみると酷い頭痛…。前日の不調がまだ続いていて高山病の恐れも。

天気はとてもよくて絶好のアタック日和だったのだが、

晴天があと2日間続くという天気予報を信じて、ここは無理をせずにレスト。

食欲は無いし、頭痛は治まらないし、正直「やってしまった…」感がたっぷり。

 

さらに一夜明けた登山8日目

朝起きると頭痛が治まっていて体調はすこぶる良好!!

天候もバッチリで昨日の完全レストが功を奏したようだ。

と、なれば当然、

クライム・オン!!

いざ、北米大陸最高の頂へ!

 

HCを出るといきなり難所のデナリパスのトラバース。

写真の太陽が出ている稜線まで右端からずーっとトラバースの登りだ。

ここは日陰の時間が多いものだから斜面がアイシィな上とても寒い!

意外にクレバスだらけなデナリパスの稜線を登りきると、フットボールフィールドと呼ばれる広い雪原にでる。

本当にフットボールができそうなくらいに広いのだけれども、それだけ風を遮る物が無いということでもある。

 

標高は5,900 m、ひとたび天候が悪化すればここはものすごい風とホワイトアウトでクライマーの命を脅かす雪原に変わるらしいが、ラッキーなことにこの日の風は体感で10〜15 m程度。

 

このフットボールフィールドを端まで歩くと最後の雪壁が出てくるのだが、これがまたデカイ!

ここまでこんだけ登らせてきたのに、まだコレ登れってか!?って感じ。

 

標高差200 mの斜面をようやく登り切ったご褒美がこれ

頂上稜線の眺望。

この稜線の先に、Denaliの頂上がある

頂上稜線は馬の背で巨大な雪庇も張り出してなかなかスリリングだけど、

ここまで頑張ってきた登山者にとっては最高の花道!

 

一歩一歩踏みしめて。

もう少し!!

アラスカ現地時間で2013年5月30日, 12時過ぎ

北米大陸最高の頂に!!

 

好天に恵まれて体調もうまくついてきたこともあって、

ここまでたった8日間で登れたことは奇跡としか言いようが無かった。

全てのものや応援してくれた人達に感謝!

 

カヒルトナ氷河もハンターもフォーレィカーも…

全てが下にある♪

 

 

 

 

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